
アノマロクロミス・トーマシーは、西アフリカのシエラレオネ、ギニア、リベリアを流れる小河川に生息する小型のドワーフシクリッドです。アフリカンシクリッドというと強いアルカリ性の水を好む湖産種が思い浮かびますが、本種は弱酸性〜中性の河川に暮らす「リバーシクリッド」で、日本の水道水でも無理なく飼育できる数少ないアフリカ産シクリッドのひとつです。
体はやや側扁した卵形で、淡いベージュの地色に体側を走る5本前後の黒い横帯と、鱗一枚一枚に散りばめられた青やターコイズのスポットが特徴です。興奮時や繁殖期には横帯がくっきりと浮かび上がり、頬や鰓蓋がメタリックブルーに輝きます。シクリッドとしては非常に温和で、同程度のサイズの魚とならほとんど問題なく混泳できることから、「最も飼いやすいアフリカンシクリッド」と評されることもあります。
1属1種の珍しいシクリッドで、かつてはHemichromis属に分類されていましたが、ジュエルシクリッドの仲間とは気性も体型も大きく異なります。種小名の「thomasi」は、模式標本を採集したシエラレオネの探検家にちなんでいます。IUCNレッドリストでは低懸念(LC)に分類されており、流通しているのは主に東南アジアや国内で繁殖された養殖個体です。
最も懸念が少ない
Least Concern(LC)
絶滅のおそれが低い状態
成魚でもオス7〜8cm、メス5〜6cmほどの小型種のため、ペアであれば45cm水槽から飼育できます。ただし底層をなわばりとする習性があり、繁殖を視野に入れるなら60cm水槽(約57L)以上を用意すると、ペア以外の魚の逃げ場も確保でき安定して飼育できます。 レイアウトは流木や石を組んで隠れ家をいくつも作り、底砂には口に含んでも傷つかない細かめの砂を敷きましょう。アヌビアスやミクロソリウムなどの丈夫な水草も好相性で、産卵床となる平らな石を1〜2枚置いておくと繁殖行動が見られることがあります。 水温は22〜26℃、pHは6.0〜7.5の弱酸性〜中性が適しています。硬度の高い水や高pHよりも、ソイルやピートで軟水寄りに保った環境でこそ本来の発色を見せます。
自然下では水生昆虫や小型甲殻類、藻類などを食べる雑食性で、飼育下でも餌の選り好みはほとんどありません。沈下性の小粒ペレットや顆粒飼料を主食とし、冷凍アカムシやブラインシュリンプ、刻んだイトメなどの生餌・冷凍餌を週に2〜3回与えると、体色の深みと繁殖意欲が格段に増します。 底層でついばむように食べる魚なので、浮上性の餌しか与えていないと上層の魚に横取りされてしまいます。沈下性の餌を選ぶか、餌をまく場所を分けて確実に行き渡るようにしましょう。1日1〜2回、数分で食べきれる量が目安です。 稚魚にはふ化直後のブラインシュリンプや細かくすりつぶした人工飼料を、1日に数回に分けて与えます。
シクリッドの中でも際立って温和で、小型カラシンやラスボラ、コリドラス、オトシンクルスなど、同じ弱酸性〜中性の水を好む魚とは幅広く混泳できます。コンゴテトラやアフリカンランプアイといった同じ西アフリカ産の魚と組み合わせれば、産地をそろえたビオトープ水槽としても楽しめます。 同種同士はペアになると底層になわばりを持つため、45〜60cm水槽では1ペアを基本に考えましょう。複数ペアを入れる場合は90cm以上の広い水槽で、隠れ家と視線を遮る障害物を多めに配置します。 産卵後は両親が卵と稚魚を守るため気が立ち、近づく魚を追い払うようになります。この時期はコリドラスなどの底棲魚が追われることがあるので、十分な隠れ家を確保するか、繁殖専用水槽を用意すると安心です。口に入るサイズの稚魚やエビ(ミナミヌマエビなど)は捕食される可能性があります。
強いアルカリ性を必要とする湖産アフリカンシクリッドとは異なり、弱酸性〜中性の軟水を好みます。サンゴ砂やアルカリ性のバッファー剤は使わず、ソイルや流木を活かした環境で飼育しましょう。
水質の変化には比較的強い魚ですが、硝酸塩の蓄積や急激な水温変化には弱い面があります。週1回・1/3程度の定期的な換水で安定した水質を保つことが、発色と長生きの秘訣です。
幼魚のうちは雌雄の判別が難しいため、繁殖を目指すなら5〜6匹をまとめて導入し、自然にペアができたら残りを別水槽へ移すのが確実です。オスはやや大きく背ビレ・尻ビレの後端が伸長し、メスは丸みを帯びた体型になります。
ペアは平らな石や流木の表面に数百個の卵を産み付け、両親で卵と稚魚を守る「基質産卵型」です。ふ化後も数週間にわたって親魚が稚魚を引き連れて泳ぐ姿が観察でき、シクリッドならではの子育てを気軽に楽しめます。
入荷直後は体色が薄くストレスで横帯が消えていることが多いですが、落ち着いた環境で飼い込むほど青いスポットが増えて美しくなります。隠れ家を十分に用意し、照明を強くしすぎないことが本来の発色を引き出すポイントです。
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最も懸念が少ない
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