
フラワー・トーマンは、インドネシアのスマトラ島とボルネオ島(カリマンタン)の河川や湿地に分布するスネークヘッド(雷魚)の仲間です。学名の「pleurophthalma」は「脇腹の眼」を意味し、体側に並ぶ黒地にオレンジの縁取りが入った大きな眼状斑(オセルス)が最大の特徴です。このコントラストの強い模様に加えて、全身が青緑色のメタリックな光沢に包まれ、各ヒレの縁がオレンジに染まる姿は、数あるスネークヘッドの中でも屈指の美しさといわれています。
スネークヘッドの中では珍しく、群れで泳ぎ回る性質を持つ遊泳性の種です。多くの近縁種が水底や物陰でじっとしていることが多いのに対し、本種は中層を活発に泳ぎ回り、側扁した体型と相まって一見するとシクリッドのような印象を受けます。成長すると40cm前後に達する中大型種で、幼魚のうちは地味な茶褐色ですが、成長とともに青い光沢とオセルスがはっきりと浮かび上がってきます。
原産地では泥炭湿地林(ピートスワンプ)の酸性の軟水に生息しており、こうした環境の開発や森林伐採により生息地が減少していることから、IUCNレッドリストでは準絶滅危惧(NT)に評価されています。流通量は多くなく、ある程度の価格帯で取引される種です。
準絶滅危惧
Near Threatened(NT)
現時点での絶滅危険度は小さいが、条件変化で絶滅危惧に移行する可能性のある状態
最終的に40cm前後に成長し、しかも他のスネークヘッドと違ってよく泳ぎ回る魚のため、単独飼育でも120cm水槽が最低ラインで、複数飼育や長期維持を考えるなら150cm以上の水槽が理想です。幼魚のうちは60〜90cm水槽でも飼育できますが、1年ほどで20cmを超えてくるため、将来の水槽を見据えた計画を立ててから迎え入れましょう。 中層を広く泳ぐため、レイアウトは中央の遊泳スペースを広く確保し、流木や石は背面と左右に寄せます。原産地の泥炭湿地を再現するなら、流木やマジックリーフ(アーモンドリーフ)で水に軽くタンニンを溶かし、弱酸性の軟水を維持してあげると発色が良くなります。照明は控えめにし、浮き草などで水面に影を作ってやると落ち着きます。 スネークヘッドは空気呼吸をする魚なので、水面とフタの間に空気の層を必ず残してください。同時に、ジャンプ力が非常に強く飛び出し事故が非常に多いため、重量のあるフタを隙間なく設置し、配線やホースの出口もしっかり塞ぐことが必須です。
肉食性で、自然下では小魚や甲殻類、水生昆虫などを捕食しています。飼育下では冷凍の小魚、エビ、クリル、ワームなどをよく食べ、人工飼料にも比較的早く餌付きます。肉食魚用の沈下性ペレットやカーニバルなどの浮上性フードを主食にし、冷凍餌をローテーションで組み合わせると栄養バランスが整います。 成魚は1日1回、または2日に1回程度の給餌で十分です。食欲が旺盛で与えれば与えるだけ食べますが、肥満になると寿命が縮み発色も鈍るため、腹部がわずかに膨らむ程度でやめるのがコツです。幼魚のうちは成長期のため1日2回、少量ずつ与えましょう。 生きた金魚やメダカの生餌は病気の持ち込みや栄養の偏りの原因になるため、できるだけ冷凍餌や人工飼料に慣らしてください。食べ残しは水質悪化につながるので、すぐに取り除くようにします。
スネークヘッドの中では比較的温和で、群れで生活する習性があるため、同種での複数飼育が可能な数少ない種です。幼魚のうちから5匹前後をまとめて導入すると、成長後も大きなトラブルなく群泳を楽しめます。ただし2〜3匹程度の少数だと力関係がはっきりして弱い個体がいじめられやすいため、水槽サイズに余裕があれば思い切って数を増やすほうが安定します。 他魚との混泳は、口に入らないサイズで、かつ攻撃的すぎない中大型魚が候補になります。大型のプレコ、ポリプテルス、ダトニオ、大型のバルブ類やシルバーシャーク、温和な大型シクリッドなどとの混泳例が多く見られます。小型魚や口に入るサイズの魚は確実に捕食されてしまうため避けてください。 他種のスネークヘッド、特に気性の荒い種との混泳は激しい闘争に発展しやすいので基本的に避けましょう。混泳させる場合は必ず隠れ家を多めに用意し、縄張り争いの逃げ場を確保してください。
幼魚は茶褐色で地味ですが、15cmを超えるころから青緑のメタリックな光沢とオレンジ縁のオセルスがはっきりしてきます。じっくり育てて本来の美しさを引き出しましょう。
飛び出し事故が非常に多い魚です。フタは重量のあるものを隙間なく設置してください。一方で空気呼吸をするため、水面とフタの間には必ず空気の層を残しておく必要があります。
原産地は泥炭湿地のブラックウォーターです。マジックリーフやピート、流木でタンニンを溶かし込み、pH5.0〜6.5の弱酸性の軟水で飼育すると、発色と調子が格段に良くなります。
スネークヘッドの中では珍しく群れを作る種です。5匹以上の群泳で飼育すると、中層を泳ぎ回る本来の姿が楽しめ、個体同士のトラブルも減ります。
水温の急変や極端な高水温に弱い面があります。ヒーターは水量に対して余裕のある出力のものを使い、夏場はファンやクーラーで28℃を超えないよう管理してください。
生息地の開発により準絶滅危惧(NT)に指定されています。衝動買いは避け、長期飼育の覚悟と大型水槽の準備を整えたうえで、できれば複数匹をまとめて迎え入れましょう。